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Good Morning Yukon Vol.2 : 2nd stage

 

前回の旅から2年後の2005年8月、写真家・宮澤聡は再びカナダのバンクーバーに降り立った。19日間をかけて壮大なYukon Riverを下るために。

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朝日が眩しい! Carmacksに向けてすでに漕ぎ出している。目的地まであと40kmあまりだ。午後には着けるだろう。ぼくはウキウキでオールを水面に運んでいる。なぜかというとぼくたちは、出発してからこれまでシャワーを浴びていないからだ。顔はテカテカ、髪の毛はレゲエ状態、身体中が脂ぎっている。川下りをしている最中は、自然を保護する意味で石鹸・シャンプーなどは一切使えない。だから川では、顔を水ですすいで体を拭くことぐらいしかできない。


 湿気が少ないせいなのか、それともぼくたちの鼻が慣れてしまったのかわからないけど、それでもぼくたちは臭くない! ただ鏡がないので自分の姿がよくわからないけど、明らかにすべてが脂ぎっている。


 最初、川に出て2〜3日目ぐらいは頭にかゆみを覚えたが、5日目を過ぎた頃からはかゆみを通り過ぎて何も感じなくなった。人間の順応性か、それともぼくが無頓着なのか、よくわからないけど、こうなると本当に自分の身だしなみとか、他人にどう見えてるとか、まったく関係なくなる。少なくとも、ここを川下りしている人々はみんな同じ状態なのは間違いない。そこで! このYukon river下りで唯一の町であるCarmacksを無視することができない。


 なぜなら、ここで後半戦の食料を調達するとともに、キャンプ場には、待望のシャワーがあるから。なんと素敵な響きでしょうか。シャワーですよ! シャワー! それを考えるとオールを漕ぐ腕が軽やかだ。自然とスピードが上がる。


 そして日差しが午後の香りを漂わせた頃、目の前にCarmacksのキャンプ場が現れた。よ〜し! ラストスパートだ! いくぞ〜! ぼくたちは、豪快にカヤックをターンして着岸した。ここまで来るとぼくたちの腕前も上級者級かはわからないが、なかなかの腕前になった気がした。


2年ぶりのCarmacksだ! 2年前のぼくは、ここが終着点だったが、今回はここはただの通過点に過ぎない。ここまででまだ半分の行程だ。そう考えると全行程は長いな〜とあらためて確認した。


 そしてぼくたちは船を陸地に上げ、テントを張った。ここは道路沿いにある普通のキャンプ場なので、熊など動物の心配はなく、船から荷物をすべて出すことができたのはよかった。

後半戦に備えるために、一回荷物をすべて出して、汚れたものなどをきれいにしたかった。



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 そして、ついにシャワーを浴びる時がきた。シャワー室に飛び込んで蛇口をひねってシャワーの滝の中に飛び込んでゆく。うわ〜! 気持ちいい〜〜! いや〜、生き返る! たまらん!! そしてシャンプーを手のひらに出して頭にこすりつける。すると、あれあれ?全然泡立たない! 全く気持ちよくない! 脂がキツ過ぎてまったく泡立たない。くそ〜! 今度こそ大量のシャンプーを頭にかけて思いっきりこする。そうしたらやっと泡が立った。ヤッター! やっと頭を洗ったという実感がした。顔も体も2回、3回と洗い倒した。いや〜久しぶりのシャワーは気持ちがいいな〜! 心も体も本当に蘇った。


 体の中の垢を落としたぼくは、少しスリムになったような、腕なんか細くなったような、日焼けした身体が少し白くなったような感じがした。シャワーってなんて気持ちいいんだ! こんなに気持ちいいものだったのか! とシャワーを浴びられることに感謝した。


 シャワーを浴びて綺麗になったぼくたちは、町まで買い出しにでた。町といってもかなり小さな町で、小さなスーパーマーケットが一軒とBARが一軒ぐらいしかない。とりあえず今夜の食料と酒、ひさしぶりにビールが飲みたい! ビールを買おう!



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 しかし前からわかっていたことだが、値段が高い。こんな僻地まで運んでくるのだからわからなくもないが、それにしても高い。標準の1.5倍はするだろうか? 特に野菜はやはり高かった。こんな北の僻地で夏が短いところでは、さすがに野菜は取れないだろうから、仕方がない。


 とにかく残り半分の行程を飢え死にしないように、高い野菜や肉などを買い込んだ。Seiji曰く、この先は魚はほとんど釣れないそうだ。彼は前回ゴールまで行っているのでこの先のことを経験済みである。Seijiの言う通り、この先魚が釣れないとなるとタンパク源が失われる。出費は抑えたいが、やはり肉を買うしかない。今回は加工肉以外に冷凍肉も購入した。川の水がかなり冷たいから冷凍で買っとけば意外に日持ちするんじゃないか? という結論に至った。そして当然ビールをそれぞれ6パック購入した。ぼくは今夜の晩酌分でプラス2本ほど。


 スーパーを出てもう一軒寄らなくてはならない場所がある。それはBARである。スーパーにはハードリカー、つまりウィスキーの類いは扱っていないので、本当は酒屋で買うのだが、どこを見渡しても酒屋がない。つまりBARでボトルで売ってもらうしかない。基本的に僕たちが乗っているカヤックのコンパートメントは、それほど物が入るものではないのでビールはスペースをとりすぎる。スコッチ、ウィスキーなどのボトルならば長く保たせることができるし、スペースをあまり取らないからこういう旅にはうってつけなのです。ぼく個人的には、ビールの方が好きですが。


 BARを見つけ、中に入って交渉してスコッチを2本売ってもらうことにした。なんかそれだけじゃ気が引けたので一杯だけビールをそこで飲み干し、BARを後にした。キャンプ場に着くと早速夕食の支度をしながら、ビールで乾杯! 身体も髪の毛も脂っこくなく頭の先からつま先まで綺麗なってビール飲む。うまい! としか表現ができない。そんな一夜を過ごして、翌朝ぼくは出発前にもう一回シャワーを浴びた。次回はゴールのDosonに着かなければ浴びることができない。


 シャワーの浴びだめをして、さ〜いざ、ゴールに向けて出発! もう、途中下車をするところはない! 何が何でもゴールのDOSONに着くしか日本に帰る方法はない。



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 ちょうど半分の行程を終えてこれから2nd stageに突入する。どんなことが待ち受けているだろうか。期待と不安が入り交じっていた。


 オールで岸を突き押して、もう後戻りができない僕にとって、未知の世界に入り込むように川の流れに乗って行った。そして、出発してすぐさまこのYukon riverの最大のイベントであるFive finger rapidsが大口をあけてぼくたちを飲み込もうと待ち構えていた。



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