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Good Morning Yukon Vol.2 : Salmon

 

前回の旅から2年後の2005年8月、写真家・宮澤聡は再びカナダのバンクーバーに降り立った。19日間をかけて壮大なYukon Riverを下るために。

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 そろそろこの荒くれ者、Big salmon riverともお別れに近づいて来た。今夜が最後のBig salmonの夜。明日にはあの大河、Yukon riverに合流する。

 

 ちょっと寂しいような、でも安心するような気持ちを両方抱えながら下っていた。しかしさっきからカヤックの船底に何かがゴンゴンと当たる。なんだ? と水面を見るも川底が浅いわけでもない。でも確実に何かが当たっている。

 

 よ~く目を凝らして水面を見ているとオ~! 何かがいる! それも1匹や2匹じゃない! また、そいつらは川の流れに逆らって上流に登っている。オオオ~! これは? シャケ! サーモン! Salmonではないか~! よく周りを見回すとなんとサーモンだらけだ。大量のサーモンが遡上しているではないか! 今は8月の半ば、ベーリング海から3000km近く遡上してやっとこさここまで来ていたのだ。前回の川下りは7月でまだ時期が早く、サーモンに会うことはできなかったが、今回はご対面できた。感激だ!

 

 しかし、川幅5、6mぐらいの所にびっしり! すごい数! 生きているサーモンにあったのも初めてだが、数の多さに圧倒された。ちょっと釣り上げてイクラでも食べようぜ! とばかりに船の上から釣り糸を投げてみた。

 

 ところが全然ひっかかる気配がない。なんだ? こいつらご飯を食わないのか? と言いたいぐらい餌に見向きもしない。何回投げても、やつらは無視していく。ちょっと川岸を見ると、死んだサーモンたちが打ち上げられている。その光景を見たぼくは、生存競争と言うか、自然の厳しさを垣間見た気がした。

 

 

th_salmon.jpg

 

 

 こいつらは遡上するときは餌を食べないのかな~? それともこの疑似餌じゃだめなのか? と思いながらもとりあえず諦めて次のキャンプ地を目指した。

 

 下っている間も船底にガンガン当たる。手を伸ばせば取れそうな気がして伸ばしても、やっぱり捕まるバカなサーモンはいなかった。そのうちに、Big salmon river最後の夜を過ごすキャンプ地に到着。テントを立てて夕食の準備をして、目の前の川にはサーモンがうじゃうじゃ。やっぱり今夜のdinnerはサーモンでしょう!

 

 今度は岸から釣りを試みる。やはりぼくらのフライには見向きもしない。投げたフライがサーモンの背中に当たっても見向きもしない。考えたぼくたちは、浅瀬の場所で手づかみに挑戦。

 

 なかなかやつらは素早い。逃げ足が速い速い! 熊がサーモンを取るようにはいかない。熊が意外にすごいことを実感した。

 

 15分ぐらい格闘しただろうか......そんな時、捕まえたー! とSeijiの叫び声。うそ~! どれどれ! 見に行くと、確かに捕まえていたが、ちょっと死にぞこない? あまり元気がない感じのサーモン。Seijiが捕まえたときも元気はなかったようで、死にそうだけど食べるには問題ないでしょう。

 

 ちなみにここでのサーモンの捕獲は許可を持っている人以外は禁止されているが、

こんなにたくさんいたら、捕まえたくなるし、食べたいし、それにぼくらが捕まえたのは死にぞこないだし。

 

 だけど、なんかルックスが少しサーモンと違うような?魚にそこまで詳しくないぼくたちは、サーモンって普通顎がしゃくれてない? こいつの顔立ちはちょっと普通。でも腹からは、イクラが少し飛び出ている。やっぱサーモンじゃん! メスは、こんなルックスなんだと思った。

 


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 しぼると出てくる出てくるイクラがたくさん! とりあえず醤油漬けしよう!

ジップロックにイクラと醤油を入れて揉んでしばらく漬け込んだ。今夜は、いくら丼にサーモンの焼き魚定食! とよだれが出そうになるの気持ちを抑えて身を捌くことに。

 

 あれ~? サーモンって身がピンク色じゃなかったっけ? 捌くと身がピンク色ではなく、なんか白色なのである。うまそうには到底思えない。大丈夫かな~?腐ってないかな~? なんで白色なんだ?

 

 あの美味しそうなピンク色を想像していたのに、ぼくの中のサーモンの焼き魚定食がガラガラと音をたてて消え去っていった。でも身が腐るわけもない、死にぞこないとはいえさっきまで生きていたのだから。とにかく焼いて食べることにした。

 

 そして1時間後、dinnerタイム! まずは念願のいくら丼を食す。う~ん? まずい! イクラは固く、まだ醤油が染み込んでないのか? 味もしない! 気を取り直して焼き魚定食。う~ん? まずい! 凄い身が固い! うまみもない!

 

 ちなみに、身もイクラも半分残して醤油に漬け込んでおけばうまくなるかな? と思い、翌日のdinnerで試したけどやっぱり不味かった。まだグレーリングの方が美味しいと思えるほどイクラも身も美味しくなかった。

 

 その時のぼくの想像では、身が固くピンク色ではないのは、イクラに栄養を奪われたからかな~? と。あとで調べてみるとやはり想像通りで、イクラに栄養や色が取られてしまうようだ。つまり遡上したサーモンの特にメスは美味しくないということらしいです。

 

 こうしてぼくたちのBig salmon riverでの最後の晩餐は、あっけない形で幕を下ろすことになった。

 

 

 

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 そして次の日、気持ちのいい朝を迎えた。太陽がサンサンと降り注いでいる。

川を見れば、今朝もまだたくさんのサーモンたちが遡上している。その光景を眺めながらコーヒーを飲み、朝ご飯を食べた。やはりその光景たるや、ものすごいものがある。昨日から始まった遡上で相変わらず川はびっしり。馬でも牛でも魚でも大群で移動するとなかなかの迫力で目を奪われる。

 

 しかし、そんな光景を横目にぼくたちも移動を開始しなくてはならない。サーモンとはまったく逆方向に下るのだ。

 

 そして勢いよくYukon riverへ合流するべく、サーモンたちの中へ漕ぎ出した。


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