• INDEX
  • HOME
  • DIRECTION'S EYE
  • GALLERY
  • PICK UP
  • SHOP
  • END

DIRECTION'S EYE

TOP / DIRECTION'S EYE / Good Morning Yukon Vol.2 : Who are they

Good Morning Yukon Vol.2 : Who are they

 

前回の旅から2年後の2005年8月、写真家・宮澤聡は再びカナダのバンクーバーに降り立った。19日間をかけて壮大なYukon Riverを下るために。

cover3.JPG


 平穏な川が続いていた。天気は、上々。まさに「川の流れのように〜」と歌いたくなるようなゆったりとしたスピードだ。こんなときは、船を漕ぐのを止めタバコをふかす。タバコと大自然。ここの空気は、むちゃくちゃうまい! しかしこれがとても合うと言うか、大自然をおかずにタバコを吸う。こんな時間も僕には必要だ。たまには心に休憩を与えないと、この先またなにが起こるかわからない。まあ、この旅自体が心に休憩を与えてはくれるが、今回のBig salmon riverは、ここまでいろいろな出来事が発生した。なかなか心が休めることが、今まではできなかった。こんな平穏な時間は貴重であった。

 どこまでこのゆったりとした時間が続くかはわからない。でも、その嫌な予感がまさか的中するとは思わなかった。

 夕方になり、僕たちは、新しいキャンプ地を模索していた。その先すぐに地図上でキャンプ地を発見した僕たちは、とりあえずそこを目指した。そして、キャンプ地に上陸した。おっ、なかなかいいじゃん! 広くて、川から上がってすぐだし、岸辺で釣り場も近いし! 動物の気配もないし、安心安心!

 では、ここをキャンプ地とする! という言葉を発したときには、このあとの出来事など予感することもできなかった。


big salmon river with trees.JPG


 僕たちはカヤックから荷物を運んでテントを作りはじめたとき、何かを感じた。なんかウザいものを感じた。しかし蚊ではないことは確信できた。今回は最初から蚊が少ないので突然蚊の攻撃が多くなるとは思えない。時期的にもユーコンでは、蚊のシーズンは終わりに近づいてる。

 なんだこのウザさは? すると僕の視界の中に緑色のちっちゃなものが飛び込んで来た。なんだこの緑虫は? なんかちっちゃくて緑色で蚊のように飛んでいる。ただそんなに数は多く飛んでなかった。ただ、僕たちからあまり離れない。しばらく観察していると別に蚊のように刺すわけでもないし、飛んでいる音がうるさいわけでもない。ただ、なんかず〜っとウザい! まるで、ネチネチと引っ付いてきてウザいって言っているのに離れない女みたいな(笑)。刺しもしない何もしないただ飛んでいるだけの、そんな虫は無視して、テントをとっととつくって川に釣りに出かけた。しかし、この後にやつらが僕たちに牙を向いてくるとは思いもしなかった。

 川で2時間ぐらい釣りをし、今晩のおかずも捕まえたのでそろそろ戻って晩ご飯でもつくりますか? と言うことで戻ると「うわっ!!!!」。なんだ!? 僕たちの視野に入った光景に驚いた。あの緑虫がものすごい数が飛んでいる。半端ではない数だ。おまけに僕のテントは赤色と言うかえんじ色と言うかそんな色なのに、僕のテントが緑色に変化しつつある。テントにびっしりとやつらが留まっている。何をする訳でもなく、ただ留まっている。ただあの量の緑虫は、ちょっと気持ち悪い。テントに付いているやつらを追い払っても追い払ってもまた引っ付いてくる。まるで「今日は男友達と遊ぶからついてくるな!」と言ってもついてくる女みたいな(笑)。


Fishing.jpg


 そろそろ夕ご飯をつくらないと暗くなってしまうので、そんな状況の中、料理にとりかかった。すると、料理をしている鍋の中にやつらが飛び込んでくる。なんだ! あいつらは! 自殺行為を繰り返す。鍋からやつらの死体をつまみ出して、料理を続行する。しかしその行為の意味が無いほど飛び込んでくる。でも、僕たちは、それを繰り返すしかない。もしその行為を諦めてしまったら、今夜の夕食にありつけることができなくなってしまう。

 僕たちは、頑張った。一生懸命にやつらの自殺行為を食い止めようと、その鍋の中に一点集中した。やつらが飛び込んでくる! はい! 取り出す。飛び込んでくる! はい! 取り出す。の攻防がしばらくつづいた。そして、どうにか夕ご飯が完成した。

 もうその頃には、日はどっぷりと暮れ、辺りは真っ暗闇。たき火とヘッドライトの灯りで夕ご飯を食べているとヘッドライトの灯りにたぐり寄せられたのか顔の周りにうざいぐらいやつらが! そしてなんと、僕たちのご飯の中に飛び込んでくるではないか! まじか〜! そいつらを皿からつまみ出しながら食べるしかない。あ、も〜! なんてウザいやつらだ! まあ、そこまではなんとか諦めて食べることはできる。 しか〜し、もう我慢の限界がきた。やつらは、攻撃の手を緩めなかった。こんどは、口の中に飛び込んで来た! あ〜、我慢の限界だ! ここは、アフリカじゃないんだから! よくテレビでアフリカの田舎部の人々が映されたときに口元や顔にハエがたかっている画を見るが、あれに近いかそれ以上だ!

 仕方が無いので、それぞれご飯を持ってテントに避難して個々にご飯を食べた。大自然の中で雨でもないのに、テントで個々にご飯を食べるのは、味気ない。

 でも、テントは快適だった。やつらは、さすがにテントに入ってくることはできずにいた。ざま〜みろ!おまえたちの攻撃なんかたいしたことないんだ! と勝ち誇っていた僕は、ひとりテントの中でご飯を食べている状況は、やはり奴らに負けたのか? と思わされた。

 そして夕ご飯を食べて外に出ると、無数の緑色のやつらが相も変わらず群れをなして傍若無人に飛び交っていた。

 たき火の前で酒を飲んでいてもやつらは、無数に飛んでいる。やつらは、火を怖がらないのだ。ただ、煙はやはり苦手のようで、煙が漂うところを避けて飛んでいるようだった。とにかく、変な奴らだ! たいした攻撃をしないし、ただ飛んでいるだけ!

でもやはり、ウザい!酒を飲んでいてもウザい! それで、僕たちは、早めに切り上げて寝ることにした。


Invasion of Green Insects.jpg


 そして、翌朝テントを出てみると緑色の気弱なやつらは消えていた。テントに張り付いていた連中は、張り付いたまま死んでいた。いったいどこに行ったのだろう?なんで張り付いたまま死んでいるんだ? 太陽が落ちて温度が下がると出現し、太陽が上がって温度が上がると消えてしまうのではないかと、僕らは推測した。張り付いたまま死んだ連中のことは推測不能だったが、昨夜の出来事はいったいなんだったのか?あの緑色のやつらは一体何者なのかは、いまだに謎のままである!

TOP OF PAGE